1. はじめに
金屏風や装飾パネルなど、大きな平面に金箔を貼り込む際の技法を「平押し(ひらおし)」と呼びます。これは最も一般的な金箔加工手法と思われがちですが、じつは仕上がりを左右する要素がたくさんあります。
「ただ金箔を並べて貼っただけ?」と思われる方もいるかもしれませんが、実はその金箔の質や職人の技術が大きくものを言う、非常に繊細な工程なのです。
2. 金箔の“質”が大きく左右する仕上がり
金箔を大きな平面に貼る際、まず重要なのは「金箔そのものの品質」です。
- 均一性:厚みがムラなく、シワや凸凹がない
- 汚れ・キズの少なさ:微細なキズでも貼った後に目立ってしまう
- 光沢と色味:純度の高い金を使用した箔ほど深みのある輝きを放つ
なぜ金箔の精度が大切?
大面積に貼る場合、金箔同士がつなぎ目でズレたりしわが生じたりすると、一目で分かってしまいます。また、接着時にわずかなキズがあると、下地や接着剤に影響を及ぼし、貼りムラや剥がれの原因になることも。
そのため、一定の品質基準を満たす高級金箔でないと、平押しを美しく仕上げることは困難です。
3. 職人技が生きる「平押し」のポイント
金箔の質が良くても、それを扱う技術が伴わなければ台無しになってしまいます。平押しにおいて、職人が特に気を配るポイントをご紹介します。
接着剤の調合と塗布
- 糊の濃度を正確に調整し、厚すぎず薄すぎないよう均一に塗布する
- 接着剤の乾き具合に合わせ、金箔を貼るタイミングを見極める
箔の配置と張り合わせ
- 升目状になるよう緻密な位置合わせを行う
- 小さな空気も逃がし、シワや浮きを極力つくらない
余分な箔の処理
- 重なった箔をカットする際、紙やすりや専用のカッターを使い、汚れやキズが入らないよう注意
乾燥・定着
- 温度や湿度に配慮しながら、接着剤が完全に定着するまでしっかり乾燥させる
職人の経験がモノを言う
作業中にほんの少しの粗があっても、仕上がりで大きく目立ってしまいます。長年の経験に基づく手の感覚や道具使いが、金箔の輝きを最大限に引き出す鍵となるのです。
4. 金箔平押しの多彩な用途
4-1. 金屏風や衝立
もっとも代表的なのが金屏風です。式典やホテルの宴会場で使用されるだけでなく、近年は美術複製の一環としてレプリカ屏風の制作や、個人宅のアートパネルとしても人気があります。
4-2. 天井・壁面装飾
ホテルのロビーや神社仏閣の内装など、大面積に金箔を貼り込むケースも少なくありません。平押しによる豪華な輝きは、空間全体の格を一気に引き上げます。
4-3. インテリア雑貨・アート作品
小物や置物など、比較的コンパクトなアイテムにも平押しは応用可能。伝統工芸品はもちろん、現代的なデザインの雑貨やアートにも金箔が取り入れられています。
5. 泰山堂のこだわり:上質な金箔を使った作品づくり
創業120年以上の歴史を誇る泰山堂では、金箔の選定から箔押し、仕上げまで一貫して高品質を追求しています。
- 厳選した金箔のみを使用:純度・厚み・表面状態にこだわり抜いた箔を調達
- 熟練の職人が平押しを担当:手作業による繊細な貼り込みで、升目状の美しさを最大限に表現
- 多様なニーズに対応:大面積の金屏風から小物の金箔仕上げまで幅広くサポート
6. まとめ
金箔を平面に貼り込む「平押し」技法は、見た目以上に高度な技術と上質な素材が求められます。金箔の品質が大きな比重を占めるのはもちろん、職人の熟練度や接着剤の調合など、様々な工程が複雑に絡み合って初めて、あの美しい輝きが生まれるのです。
泰山堂では、常に品質に妥協せず、お客様の多彩な要望に応えるべく日々技を磨いています。もし金箔を使ったスクリーンやパネル、あるいは修理やリメイクをお考えでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの空間を一段と格調高く彩るお手伝いをいたします。
コメント