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屏風の歴史:風よけから美術品へ、日本文化を彩る障壁具の変遷

1. はじめに:文字が語る屏風の原点

「屏風(びょうぶ)」と聞くと、豪華な金屏風や芸術的な絵屏風を思い浮かべるかもしれません。ところが、その名前の由来を紐解けば、まずは実用的な役割が最初にあったとわかります。

  • 「屏」 の字には「おおう・ふさぐ・さえぎる」という意味があり、当初は「風を防ぐ」「間仕切りを作る」道具として使われていました。

この記事では、日本書紀に記された古代の記録からはじまり、中世にかけての技術的変化、そして美術品としての地位を確立するまで、屏風の歴史をたどりながら、その魅力に迫ります。

2. 古代:献上品としての屏風

2-1. 天武天皇時代における屏風

日本最古の正史とされる『日本書紀』には、天武天皇 朱鳥元年(西暦686年) における記述があります。新羅の使節が献上品として、金や銀、錦・絹布、薬物などとともに屏風を献じたという一文が、それです。
これが日本の文献における「屏風」の最古の登場例とされています。

2-2. 当時の屏風は中国式

この頃の屏風は、中国式の衝立状が複数扇に分かれており、革紐(かわひも)によって結ばれた構造でした。まだ、現代のように折りたたむ機能はない時代で、あくまで一枚板(パネル)を紐で繋いだ簡易的な障壁具だったと推測されています。

3. 平安時代:日本で盛んに製作されるように

3-1. 寝殿造りと室内装飾

平安時代になると、寝殿造りという貴族の住まいが主流になり、広大なワンルームを細分化するために障壁具が欠かせなくなります。屏風は間仕切りとして、部屋を仕切ったり、風や視線をさえぎる役割を担いました。

3-2. 調度品・献上品としての地位

この頃から屏風は、室内装飾としても評価され、また皇室や貴人への献上品としても重宝されました。美しい絵や装飾が施された屏風は、高級品として扱われ、家柄を示す品として大いに活躍します。

4. 中世:革紐が「和紙蝶番」に進化

4-1. 屏風の大画面化を実現する蝶番

中世になると、屏風の接合部が革紐から和紙の蝶番(ちょうつがい)へと変化します。これによって、前後に折りたためる構造が確立され、一枚の大きな画面を作り出せるようになったのです。
とりわけ、室内装飾や儀式の背景として、屏風絵が描かれる文化が開花していきます。

4-2. 武家文化と屏風絵の発展

鎌倉・室町と武家が台頭する時代になると、戦国大名が大広間や城郭内の空間を彩るために屏風を活用する事例が増加します。派手な絵や金箔を貼った金屏風が好まれ、合戦や城内の儀礼での「ハレの場」を演出するアイテムとして、需要が一気に高まります。

5. 近世:芸術的価値の確立

5-1. 安土桃山時代~江戸時代における屏風絵

安土桃山時代にかけて、「障壁画」はひとつの芸術ジャンルとして大成し、狩野永徳や長谷川等伯などの絵師が、豪華絢爛な金屏風を手掛けました。これらは大名や武家屋敷だけでなく、寺院や公家の邸宅でも重んじられ、絵画そのものとしての価値を高めていきます。

5-2. 江戸時代の屏風文化と庶民への普及

江戸時代に入ると、町人文化の隆盛に伴い、屏風を使った祭礼や町家での室礼も見られるようになります。有力商人の家などでは、絵師による屏風絵を誂えたり、芝居小屋での演出に「絵看板」として応用されたり、多彩な場面で活用されました。

6. 現代における屏風とその歴史的意義

6-1. 式典・記念写真の背景に

現代の結婚式や企業表彰式などでは、金屏風を背景に新郎新婦や受賞者が並ぶのが通例です。これはまさに、古くから屏風が「ハレの場を作り出す」 象徴として受け継がれてきた証といえるでしょう。

6-2. インテリア・アートピースとして

近年は伝統的な金屏風だけでなく、モダンデザインの屏風やアート作品としての屏風も人気を集め、住宅や商業施設のインテリアに取り入れる例が増えています。折りたためるため、省スペースで保管できるメリットも重宝されています。

まとめ:風よけから芸術へ、屏風の長い旅

元々は「風を防ぐ」「間仕切りに使う」という実用的な存在だった屏風ですが、歴史を経るに従って、和紙蝶番の発明や屏風絵という芸術的価値の確立によって、高級調度品・美術工芸品へと変貌を遂げました。
「ハレの場」の背景として、あるいは家柄や富を象徴する献上品として、時代ごとに異なる役割を担いながら発展を続けてきたのが、日本の屏風文化なのです。

奈良時代に中国から伝わった障屏具が、日本人の生活・文化・芸術との融合によってここまで進化し、多様なシーンで愛され続ける。まさに「実用品」から「芸術品」への大きな変遷こそが、屏風の長い歴史を物語っているのです。

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